先天性QT延長症候群でβ遮断薬を使う理由

Congenital long QT syndrome循環器

先天性QT延長症候群は交感神経刺激により心室頻拍、心室細動が誘発されるため

QT延長症候群とは、心筋活動電位の延長により、心電図上でQT延長(QTc≧0.44sec)がみられTorsade de Pointes(TdP)と称される多形性心室頻拍をきたします。QT延長そのものでは無症状ですが、TdPを生じた場合は失神や突然死をきたす危険があります。

先天性(遺伝性)QT延長症候群では13個の原因遺伝子(LQT1~13)が同定されており、LQT1~3で全体の90%を占めます。誘因刺激としてLQT1では運動(特に水泳)、LQT2では目覚まし時計など突然の音刺激、情動ストレスが報告されています。治療は運動制限、β遮断薬が有効です。β遮断薬はβ1受容体を抑制し、心収縮力低下と刺激伝導系の興奮を抑制させます。LQT3では安静、睡眠が言われており、治療はNaチャネル遮断薬(メキシレチン)が有効です。女性患者の薬物治療としては、β遮断薬が推奨されています。

薬剤性、高度な徐脈や低カリウム血症が原因となる後天性(二次性)QT延長症候群では、治療の基本は原因薬剤の中断、原因の除去です。

『QT延長症候群の治療=β遮断薬』と丸暗記してしまうと、徐脈による後天性(二次性)QT延長症候群では禁忌になるので、注意が必要です。病態を理解したうえで治療方法を覚えましょう。 徐脈に伴う QT 延長症候群の治療は、アトロピンやイソプロテレノール、ペーシング、恒久的ペースメーカー植え込みです。

参考文献
遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017 年改訂版)

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