心不全の薬物治療は4剤同時が基本になった
HFrEF(左室駆出率の低下した心不全)の薬物治療は、この10年ほどで考え方が大きく変わりました。予後を改善する4つの薬剤クラスをまとめてFantastic Fourと呼びます。
第120回医師国家試験の総評でも「頻出疾患の治療アップデートが問われた」「古い定番のままでは選べない問題があった」と指摘されています。心不全はまさにその代表格です。
4本柱のゴロ アブはムシ
| 音 | 薬剤クラス | 代表薬 |
| ア | ARNI(またはACE阻害薬/ARB) | サクビトリルバルサルタン |
| ブ | β遮断薬 | カルベジロール、ビソプロロール |
| ム | MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬) | スピロノラクトン、エプレレノン |
| シ | SGLT2阻害薬 | ダパグリフロジン、エンパグリフロジン |
ア(ARNI)ブ(β遮断薬)はム(MRA)シ(SGLT2阻害薬)
アブは無視していい虫ですが、この4剤は無視できません。
何が変わったのか
以前は「1剤を最大量まで増やしてから次の薬を足す」という順次導入が一般的でした。現在は少量ずつ4剤を早期に立ち上げる方向に変わっています。
理由は、それぞれの薬の予後改善効果が独立して上乗せされること、そして効果の発現が早いことがわかってきたためです。1剤を最大量にするまで数か月かけていると、その間の予後改善の機会を失ってしまいます。
とくに大きな変化がSGLT2阻害薬です。もともと糖尿病の薬ですが、糖尿病の有無を問わず心不全に適応があります。「糖尿病がないから使えない」という選択肢は誤りです。
HFpEFはどうか
HFpEF(左室駆出率の保たれた心不全)では、長らく予後を改善する薬がありませんでした。現在はSGLT2阻害薬が推奨されるようになっています。
「HFrEFは4本柱、HFpEFはSGLT2阻害薬と併存疾患の管理」と整理しておくと混乱しません。
国試ではここが問われる
選択肢比較で問われるのはSGLT2阻害薬を選べるかです。古い知識のままだと「利尿薬」「ジギタリス」に手が伸びますが、これらは症状を改善するが予後は改善しない薬です。「予後を改善する薬はどれか」と問われたら4本柱から選びます。
また、ARNIとACE阻害薬は併用しない(切り替える。血管浮腫のリスク)点、ACE阻害薬から切り替える際は36時間空ける点も出題されうるポイントです。

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