妊娠後期の出血で必ず鑑別する2つ
妊娠後期の性器出血といえば、常位胎盤早期剥離と前置胎盤です。どちらも母児の生命に関わりますが、対応がまったく違うので確実に区別する必要があります。
第120回では産婦人科の出題が増加したと分析されており、この基本的な鑑別は落とせません。
鑑別表
| 常位胎盤早期剥離 | 前置胎盤 | |
| 腹痛 | 持続的な強い痛み | 無痛性 |
| 子宮 | 板状硬(木板様硬直) | 軟らかい |
| 出血 | 外出血は少ないことも(後血腫) | 反復する性器出血 |
| 胎児 | 胎児機能不全に陥りやすい | 比較的保たれる |
| DIC | 合併しやすい | 通常なし |
| 内診 | — | 禁忌 |
| 対応 | 緊急帝王切開 | 予定帝王切開(出血時は緊急) |
鑑別のゴロ ハクリは板のように痛い、ゼンチは痛くない
痛みの有無ひとつで、ほぼ切り分けられます。
妊娠後期の出血の鑑別
ハクリ(常位胎盤早期剥離)は板のように硬くて痛い
ゼンチ(前置胎盤)は痛くない
なぜ早期剥離は出血が少なく見えるのか
常位胎盤早期剥離では、剥がれた面から出た血液が子宮壁と胎盤の間にたまります(後血腫)。外に出てこないため、外出血の量は実際の出血量をまったく反映しません。
この血腫が子宮筋層に入り込むと子宮が硬くなり、これが板状硬の正体です。さらに胎盤から組織因子が大量に流入するためDICを合併しやすくなります。「出血が少ないから軽症」と判断すると命取りになる、という点が出題ポイントです。
前置胎盤に内診をしてはいけない
前置胎盤は内子宮口を胎盤が覆っている状態です。ここに指を入れれば胎盤を傷つけ、一気に大量出血します。
妊娠後期の性器出血では、まず経腹超音波で胎盤の位置を確認してから内診する。これが鉄則です。「内診を行う」という選択肢が出たら禁忌肢を疑ってください。
国試ではここが問われる
リスク因子の対比も定番です。常位胎盤早期剥離は妊娠高血圧症候群、外傷、喫煙、既往。前置胎盤は帝王切開既往、多産、高齢、喫煙、多胎。帝王切開の既往は前置胎盤(および癒着胎盤)のリスクという点が問われやすいところです。
また、常位胎盤早期剥離は超音波で診断できないことがある点も重要です。画像で所見がなくても、臨床像で疑ったら対応を進めます。

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