ALPが上昇・低下する原因

ALP検査

基準値:80~260 IU/L
検査目的:肝胆道系疾患、骨代謝亢進状態のスクリーニング、診断、経過把握など

ALP はγGTP, LAP, 5’-ヌクレオチダーゼと共に、肝胆道系酵素と呼ばれ、閉塞性黄疸や肝内胆汁うっ滞の指標として用いられる一方、肝内占拠性/浸潤性病変を示唆する酵素としても広く肝胆疾患の指標となっている。肝胆由来以外に、骨、胎盤、小腸由来のアイソザイムがあり、ALP高値の場合は、アイソザイムの測定が必要である。日常的にはγGTP と併用することが多い。 ALP とγGTP が揃って上昇する場合は、まず閉塞性黄疸を考えて腹部超音波検査を行う。

血液型B型、O型の分泌型では、食後に生理的な上昇をきたすので(ALP5)、原則として空腹時採血である。
成長期、妊娠後期には生理的に上昇する。男性の方が若干高値をとる。
甲状腺機能亢進症や梅毒などの非肝疾患でも上昇することを忘れない。

ALP の上昇する疾患の筆頭に、肝内占拠性病変があり転移性肝癌はその代表である。一方、小さな肝細胞癌、肝嚢胞、肝血管腫ではALPは上昇しないことが多い。しかし、他方、肝内の散布性小肉芽腫性病変では上昇する。梅毒、サルコイドーシス、粟粒結核はその代表格である。 ALP のみ異常高値で、他疾患を認めない場合、マクロ AST やマクロアミラーゼ血症の場合と同様、酵素結合性免疫グロブリンが原因の場合がある。

ALP値考えられる病態・疾患
上昇600 IU/L以上[高頻度]閉塞性黄疸(胆管癌, 肝門部胆管癌, 膵頭部癌, 総胆管結石, ファーター乳頭癌, 傍乳頭憩室(症候群), 自己免疫性膵炎など), 肝占拠性病変(転移性肝癌など), 肝内胆汁うっ滞( PBC, PSC, 薬物性, 肝内胆汁うっ滞型急性肝炎, 骨疾患(転移性骨腫瘍)

[可能性]肝浸潤性/占拠性病変(肝膿瘍, 悪性リンパ腫, 白血病の浸潤, サルコイドーシス, 粟粒結核, 梅毒(2~3期), アミロイドーシスなど), 甲状腺機能亢進症(約60%の例で上昇する。ALP のみの上昇で受診する例もあり要注意)
260~600 IU/L[高頻度]上記に加えて, 胆道感染, 骨疾患(骨折, 骨軟骨化症など), 薬物性肝障害, アルコール性肝障害, 脂肪肝, うっ血肝, 急性肝炎, 慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌(進展例), 悪性腫瘍, 甲状腺機能亢進症, 生理的上昇(成長期, 妊娠, 血液型 B 型 O 型の分泌型など)

[可能性]肝浸潤性/占拠性病変(悪性リンパ腫, 白血病の浸潤, サルコイドーシス, 粟粒結核, 梅毒(2~3期)など), 骨疾患(副甲状腺機能亢進症, くる病, 骨肉腫, Paget病など), 潰瘍性大腸炎, 慢性腎不全
低下80 IU/L以下[可能性]遺伝性低 ALP 血症

参考文献
異常値の出るメカニズム
臨床検査データ
診断に自信がつく検査値の読み方教えます

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